働き方改革で何が変わる vol.3
労働人口の4割を占める非正規雇用労働者
働き方改革法案のなかに「同一労働同一賃金の実現」があります。これは、正社員と非正規雇用労働者との不合理な待遇差を禁止するものです。現在、パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者は労働人口の約4割を占めています。具体的な数値は(2020年3月16日に公開したブログ)←リンク のまとめに記載しています。現実に正社員と非正規雇用労働者の待遇を比較すると大きな差がある企業が存在すると言われています。
「同一労働同一賃金の実現」に向けてパートタイム労働法、労働契約法(有期雇用契約)、労働者派遣法が立体的に改正されました。パートタイム労働法については、パートタイム労働者だけではなく、有期雇用労働者も対象に含まれることになり「パートタイム・有期雇用労働法」に変わります。この法改正の重要なポイントは「不合理な待遇差をなくすための規定の整備」「労働者に対する待遇に関する説明義務の強化」「裁判外紛争解決手続[行政ADR]の規定の整備等」の3つです。今回は「不合理な待遇差をなくすための規定の整備」について説明します。
「不合理な待遇差」とは?
「不合理な待遇差をなくすための規定の整備」とは、正社員と非正規雇用労働者とのあいだの「不合理な待遇差」をなくすことです。
「不合理な待遇差」の判断基準は「均衡待遇」と「均等待遇」の2つの考え方にもとづきます。
「均衡待遇」とは「職務内容」「職務内容・配置の変更範囲」「その他の事情」という3つの事項を考慮しバランスのとれた待遇が求められます。
「均等待遇」とは「職務内容」と「職務内容・配置の変更範囲」がまったく同じ場合の待遇差を禁止するものです。
均衡待遇の3つの事項
「均衡待遇」の「職務内容」「職務内容・配置の変更範囲」「その他の事情」という3つの事項について詳しく説明します。
○職務内容
「職務内容」とは「業務の内容」と「その業務にともなう責任の程度」のことをいいます。「業務の内容」とは販売職や事務職などの職種です。「責任の程度」とは与えられている権限の範囲のことで決裁権限の範囲や成果へ求められる役割などです。具体的な事例で説明すると「正社員は繁忙期や急な欠勤者が出た場合の対応を求められ、月末になると残業することが多くなるが、有期雇用の契約社員にはこれらの対応は求められない」ということであれば「業務に対する責任の程度が異なる」という判断で待遇差とはなりません。
○職務内容・配置の変更範囲
「職務内容・配置の変更範囲」とは転勤や昇進などの人事異動のことです。具体的な事例で説明すると「正社員は全国的に転居を伴う転勤があるが、非正規雇用労働者は自宅から通える範囲でのみ異動している」ということであれば「職務内容・配置の変更範囲が異なる」という判断で待遇差にはなりません。
○その他の事情
「その他の事情」とは「職務の成果、能力、経験」「合理的な労使慣行」「労使交渉の敬意などの様々な事情」が含まれます。具体的な事例で説明すると「正社員の店長には店長手当を支給しているが、有期雇用の契約社員の店長には店長手当を支給していない」この場合は店長という職務に対して店長手当が支給されているのであれば「職務内容」が同じということを考慮して待遇差があると判断されます。
均等待遇の禁止事項
「均等待遇」とは「職務内容」と「職務内容・配置の変更範囲」がまったく同じ場合は待遇差を禁止するものです。「職務内容」と「職務内容・配置の変更範囲」いついては上記を参照ください。具体的な事例で説明すると「正社員と有期雇用の契約社員が、職務内容が同じ、転居を伴わない範囲での転勤をする、他の職種には就くことがない、昇進は現場責任者まで」という場合は「職務内容」「職務内容・配置の変更範囲」も同じと判断し、すべての待遇について同じ扱いをする必要があります。
まとめ
企業によっては、正社員と非正規雇用労働者との間で賃金の決定基準・ルールの相違があるかもしれません。相違の理由として「パートだから」「将来の役割期待が異なるから」などという主観的、抽象的な説明は認められないということです。「職務内容」「職務内容・配置の変更範囲」「その他の事情」の客観的・具体的な実態に照らして、賃金の決定基準・ルールの相違を見直す必要が出てくるのです。